沢潟蒔絵印籠 (おもだかまきえいんろう)
黒漆塗四段の印籠で、表裏に沢瀉と酢漿草をあしらう。沢瀉の葉には、金銀高蒔絵、錆漆、黒漆、螺鈿や切金などの多彩な技法を用い、露には乳白色のガラスを象嵌する。シンプルな意匠ながら、葉の1枚、実のひと粒までを丁寧に描写し、天性のデザイン感覚でまとめあげている。
柴田是真(1807~1891)は幕末・明治の代表的漆工家、画家。江戸で生まれ、古満寛斎に蒔絵を、鈴木南嶺に絵を学び、どちらも非凡な才能を発揮した。明治期には国内外の博覧会へ出品し、帝室技芸員としても活躍した。軽妙洒脱で粋な作風は海外でも評価が高い。