紅梅鴨図 (こうばいかもず)
金子金陵(?~ 1817)は、出生をはじめ詳しい経歴が伝わっていない。三河国田原藩士三宅康之の第三女を妻とした、旗本大森勇三郎の家臣であったといわれ、渡辺崋山の師として知られる。沈南蘋の影響を受けた写実的な画風が特徴で、花鳥画を得意とした。雌雄の鴨が緻密に描き出される。足元に可憐な小菊が咲き、頭上に梅の花がほころぶ。梅の枝と鴨とがS字状の構図をつくり、構図上の工夫から安定感が生れている。落款から、寛政6年冬に伊豆三島の宿で描いたものと分かり、資料の少ない金陵の動向を知る貴重な作品である。