能面 小面
「小」は可愛らしい、美しいことを意味し、最も若い女性の面を表わす。頬のふっくらとした面立ちに切れ長の目元。若々しさのなかにも豊艶な香りをただよわす。付属の面袋に『新古今和歌集』所収の藤原定家の和歌一首が刺繍され、藤原定家と式子内親王との忍ぶ恋を題材とした演目『定家』に用いられたと思われる。裏面の右肩に放射状の「しらせ鉋(作家の符牒)」は、近世初頭の面打で近江井関家四代の名人、河内大掾家重を示している。